いよいよ7カ月後に迫った東京五輪。そこに照準を定め活動する「チームブリヂストンサイクリング」はトラック競技を主戦場に2019年には世界大会で好記録とメダル獲得を連発している。その躍進を支えるのが創業70年の「ブリヂストンサイクル」。2018年にトップの座に就いた望月基(もちづき・もとい)会長に同社やブリヂストングループの五輪での役割、これからの戦略についてインタビューした。
ブリヂストンがワールドワイドパートナー
ブリヂストンサイクルの親会社「ブリヂストン」は2014年からオリンピックのワールドワイドパートナーとして東京2020大会、そして2024年までのオリンピックを応援している。2018年10月にブリヂストンサイクルの社長に就任(2019年9月より同社会長)、2019年1月からはブリヂストンスポーツ社長も兼任した望月氏は、グループ企業の中でも五輪に親和性の高い自転車をタッチポイントとして、「CHASE YOUR DREAM」をスローガンに、五輪に向かう選手たち、自治体を後ろ立てしている。
なぜ、どのように、五輪や選手をサポートするのか、五輪後のいわゆる「レガシー」とは何なのか、などについて尋ねた。
◇ ◇
――いよいよ2020年を迎えますが、東京五輪での「ワールドワイドパートナー」、目指すものは、何でしょうか。
望月会長:始めにお伝えしたいのは、オリンピックに対する活動はブリヂストンサイクルや、ブリヂストンといった、個社ごとの活動でなく「チームブリヂストン」というグループ全体の活動だということです。その中で私たちのスローガン「CHASE YOUR DREAM」があります。いろんな困難を乗り越えて、夢や目標にチャレンジする。その挑戦する全ての人々を支えるという意味ですね。その中には大きく①「チームで挑戦する」②「チームで応援する」、③「チームが架け橋になる」という3つの活動があります。
――それぞれを簡単に説明していただけますか。
望月会長:1つ目の「チームで挑戦する」は、例えば、今私たちが機材を供給させてもらっている日本代表チームがオリンピックで活躍してメダル、できれば金メダルを獲るという夢に向かって挑戦し、その挑戦する選手たちを支えることです。機材だけでなく、挑戦しやすい場や、雰囲気作りを含めて支えていくことですね。
2つ目の「チームで応援する」は、いろいろな人が応援を通じて、夢や目標に向かって挑戦する素晴らしさを知り、それをみんなでシェアするのが目的。特に世界を目指している選手たちの一挙手一投足には感動しますよね。その感動を目に焼き付けた子供たちが、自分の夢や目標に向かって挑戦する。その子供たちの挑戦する姿を見た、また別の人たちが感動して夢に挑戦する。そういう循環に期待しています。
3つ目の「チームが架け橋になる」は、地域や選手と私たちにはいろいろな接点があります。そこで自転車文化など、いろいろな形で地域社会に貢献し、文化や活動の架け橋になっていきたい、ということです。単純に大会を成功させて終わり、ではなくその後にどういうレガシーを残すかという時に、私たちの「支える」という活動が架け橋になればよいと思っています。
自転車は「マイファーストブリヂストン」
――その中でブリヂストンサイクルの役割は何でしょうか。
望月会長:そうですね。そこは「最高の機材、最強の機材を揃える」と答えがちなところです。もちろんそれもチームブリヂストンとして限界に挑戦する、支える活動として大事な部分ではありますが、それだけでなく「応援を通じて子供たちと挑戦する素晴らしさをシェアする、地域の方や子供たちと選手との交流を通じて、文化を残していく」。そういった役割も心掛けています。
ブリヂストングループで見ると、売り上げの大半はタイヤで、「多角化(製品)※」という分野が2割弱です。自転車は多角化に入る商品ですね。ただし、タイヤ関連のお客様は成人男性が多い傾向にあります。それに対し、自転車は幼児車からシニア用まで幅広いラインナップがあり、「ブランドの広さと深さ」を持っています。幼児から学生、成人、シニアといったライフステージの変化を「ブランドの広さ」、オリンピックに出るような選手から自転車に乗れないような子供たちといったライフスタイルの違いを「ブランドの深さ」と考えています。
グループの中で、これだけ幅広いライフステージにまたがり、いろいろなライフスタイルに関わっている事業はサイクルとスポーツだけ。そういった点で私たちの果たす役割は大きいと感じています。よく「マイファーストブリヂストン」と言うんですが、「ブリヂストン」というブランドに出合う最初のタッチポイントは自転車であることが多いんです。
※多角化製品=自動車関連部品、ウレタンフォームやその関連用品、自転車、スポーツ用品など
――最近では、静岡県や山梨県との取り組みに力を入れていますが、具体的には何をどのように行っていますか。
望月会長:東京2020での自転車ロードレースは東京を出発し244km、山梨県、静岡県を通ります。また、トラック競技やマウンテンバイクは静岡県で開催されます。この自転車競技の開催を通じて、すごい選手たちが目の前を通ったという感動を感じてもらうことがとても重要だと思っています。ロードレースのオリンピックテストイベントでは静岡県が主催の「自転車競技開催1年前イベント in 静岡」に企画協力し、集まった1200人の方々に自転車競技の魅力を伝えました。こういった機会をたくさん作って、自転車、サイクルスポーツとのタッチポイントを増やしていくことが大事です。
ただ、オリンピックの主な自転車競技開催地ということではその2県ですが、自転車を通じた安全安心、遊びや健康(の訴求)は他の県でも一緒です。そういった思いをもっている自治体とは幅広く、いろいろな協力関係をもっていきます。
――そのなかでトラック競技に力を入れたり、チームを持つ理由は何でしょうか?
望月会長:トラック競技に関しては、日本の大会で日本人が日本の機材でメダルを獲るという夢を実現するチャンスが一番あることが大きいですね。また、チームに関しては当社は1964年にブリヂストンサイクル自転車競技部を発足し、1972年のミュンヘンオリンピックにはじめて所属選手が出場しました。そこからのべ8人のオリンピアンを輩出してきた歴史があります。また、そのうちの3人は現役で今でも従業員として私たちの会社に所属してくれています。それぐらい長い時間をかけてスポーツ自転車に力を入れ、自転車文化の醸成に寄与してきた当社の役割は大きく、やって当たり前だと思います。チームで勝利を目指すことは当然ですが、チームの選手たちや3人のオリンピアンが自分の言葉で経験を語り、それを通じて子供たちが臨場感、リアリティーを感じて、自転車っておもしろいなあ、と思うような活動に力を入れています。
――トラック競技に興味を持ってもらうには?
望月会長:まずは会場に来てもらうことが大事ではないでしょうか。私自身、伊豆のベロドロームでトラック競技を間近に見て、選手たちの息遣い、熱気、スピード感を肌で感じて、自分の自転車に対するイメージが変わりましたから。これはトラック競技だけでなくロードでも同じですよね。
――五輪を商品開発にどのように生かしていくのでしょうか?
望月会長:自転車の開発に関して方向性は2つ持っています。ひとつは世界で最速最高の自転車で金メダルを獲るという夢に向かってグループの総合力を結集して夢を実現することで、エッジの効いた開発が進んでいくと思っています。ハイエンドの頂点を極めるような、ハイレベルな開発につながっていきます。
もうひとつは普及という側面。単に自転車で金メダルを取ればいいというのではなく、それを見た人たちが「自転車に乗ってみよう、遊んでみよう」と思ったときに自転車を楽しむ人たちの層が広がっていく。普及という面でもオリンピックは非常に大事です。
例えば、当社のスポーツ車ブランド「アンカー」はこれまで、レースを嗜好する人たちのブランドでしたが、今年「レーシングライン」「アクティブライン」の2つのラインを作りました。アクティブラインでは車体のデザインも変更し、レーシーな性能は持ちつつも、街になじむ雰囲気を持つラインなのでオリンピックの最高機材がシャワー効果(※)で降りてきたときに、レースシーンだけでなく、多様な嗜好を持った人たちのニーズをしっかり受け止められるようにしたいと考えています。さらその効果を、スポーツルック車までつなげていきたいですね。
※シャワー効果=マーケティング関連の用語で、デパートの上の階を充実させ、シャワーのように上から下へお客さんの流れを作り販売につなげること。
――子供たちが五輪を見て自転車に乗りたくなることを期待できますね
望月会長:オリンピックを見て自転車に乗りたくなったときに、どのような車種でも良いので、(ブリヂストンサイクルの自転車が)身近にあることが大事ですね。私たちは子供車から通勤通学車、子乗せ車、シニア向け自転車まで幅広く揃えています。それらを全部つないで、補強するような場や、サービスの提供をさせていただけることが、私たちの強みであるし、それがお客様の期待でもあると思っています。
お客様からの期待という点でいうと、私たちに対するお客様のブランドイメージは「安全安心、丈夫で長持ち」がもっとも多く、私たちに対する信頼感を感じました。それともうひとつ、トータルとしての、デザインや完成度も評価してもらっている。信頼性、完成度は絶対に期待を裏切っていけない。
ブリヂストンの自転車のヘッドマークには必ずBマークがついています。Bマークをお客様が見た瞬間、ブリヂストンのブランドイメージが浮かんでくるような活動を心掛けています。
――昔と今の「自転車」への価値観の違いは、どのあたりに感じますか?
望月会長:昔はクリスマスプレゼントでもらうのが自転車だったりして、今よりも自転車に乗ることに対するウキウキ感があったように思います。休日も公園には何組かの家族がいて、補助輪外しを頑張っていたり。今は必ずしもそうではないですよね。だからこそ自転車の面白さ、楽しさを伝える必要があると思います。
ただ自転車を買ってほしいということだけではなく、自転車を一度卒業した人たちもまた自転車に戻ってきたりする。おじいちゃんおばあちゃんが「私の小さい頃はね」とお孫さんに語りかけ、お孫さんがおじいちゃんと同じブランドの自転車に乗ったりする。親子3代が同じ自転車文化の中、共通言語で盛り上がる。そういうつながりができたらいいなあ、と思います。
それは他の会社にはできないと考えていますし、私たちにはやらなくてはいけない「役割責任」があります。
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January 06, 2020 at 04:00AM
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「ただ五輪で勝つためではなく」ブリヂストンサイクル望月基会長が語る、東京2020とその後の展望 - Cyclist(サイクリスト)
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