年々深刻化する環境問題。今年6月、日本政府によって出された「環境白書」では、地球温暖化の進行により今後豪雨災害や猛暑のリスクがさらに高まると予測され、将来世代にわたる影響が強く懸念されると、公に警鐘がならされています。
この現状を解決するために、世界の国々は「サーキュラー・エコノミー」を目指そうと取り組みを進めています。そんななか、自治体や企業、ブランドが取り入れているのがリサイクルに付加価値をつけた「アップサイクル」というアイデア。
ここではアップサイクルとはなにか、事例やアップサイクルを推進する企業、ブランドを紹介していきます。
アップサイクルとは?
©Igisheva Maria/Shutterstock.com
アップサイクルについて、社団法人日本アップサイクル協会によると以下のように定義されています。
アップサイクル(Upcycle)とは、リサイクルやリユースとは異なり、もともとの形状や特徴などを活かしつつ、古くなったもの不要だと思うものを捨てずに新しいアイディアを加えることで別のモノに生まれ変わらせる、所謂”ゴミを宝物に換える”サスティナブルな考え方。
つまり、"ゴミ"とされていたものを粉々に壊して全く別のものとして再度利用するのではなく、その製品の良さを活かしてより良いものに生まれ変わらせるというのがアップサイクルなのです。
リサイクル品として回収したものを一旦粉々にして別のものに生まれ変わらせるリサイクルは、その過程で燃料など別の資源が必要になるため、環境負荷が大きいことが問題に。
ペットボトル1本をリサイクルしても1本のペットボトルができるわけではない上に、その過程で燃料も使うため、捨てるよりはいいものの、マイナス要素があるということなのです。
また、アップサイクルの対義語に「ダウンサイクル」というものがあります。ダウンサイクルとは名前に「ダウン(down)」とあるように、リサイクル過程で素材の良さが損なわれることを意味します。
アップサイクルとリサイクルの違いは?
リサイクルとは、主に資源を回収して、それを粉々にしたり、溶かしたりして再利用すること。その再利用の過程には燃料などの資源が使われます。
一方、アップサイクルは元の素材の魅力を活かして、リサイクルしたものに付加価値をつけます。例えば、捨てられる予定だった古生地を使って、おしゃれな雑貨屋服を作るのもアップサイクルの1つ。
つまり、アップサイクルではその価値はアップグレードされますが、リサイクルでは元の素材以上の魅力を引き出すことは難しく、そのリサイクル過程に使われる燃料などを含めて考えても、その価値や魅力は横ばい、もしくはダウングレードしてしまう可能性があるのです。
アップサイクルの事例紹介
では実際に、どんな“ゴミ”がどんな素敵なモノに生まれ変わってアップサイクルされているのでしょうか。3つ事例を挙げてご紹介します。
「アーバンリサーチ」のアップサイクルハンガー
「アーバンリサーチ」は、使われなくなった木製ハンガーに、アップサイクルするプロジェクト「Re:hanger」を販売しました。
使われなくなったハンガーを職人の手によって削り加工を施し、木材ならではの魅力を存分に引き出した商品です。一つ一つ違った温かみがあるため、他とかぶらないというのも嬉しいポイントでした。
「Gumshoe」のガムでできたアップサイクルスニーカー
「Gumshoe」は吐き捨てられたガムを使って、スニーカーを製造するプロジェクトを実施しました。「Gumshoe」の本拠地アムステルダムでは、道端のガムや電柱に貼り付けられるガムが深刻な問題となっているそう。なんと毎年約150万キロのガムが捨てられているとか。そんな社会問題を喚起すべく始まったのがこのプロジェクトです。実際にガムが使われているのはソールの部分だけですが、アップサイクルと社会問題の喚起の両立を実現した事例です。
「PET Lamp project」のアップサイクルランプ
このプロジェクトは、デザイナーのAlvaro Catalán de Ocónさんを中心におこなわれている、ペットボトルをランプなどの家具にアップサイクルする活動です。彼らは地域色あふれる家具の政策を目指しており、オーストラリア原住民の知恵なども取り入れながら制作活動を進めています。
▼参考記事はこちら▼
アップサイクルを推進するブランド
世界を見渡してみると、アップサイクルに着目し取り組みを進めている企業やブランドは多くあります。ここでは、積極的にアップサイクルを用いて製品を作っているブランド4つをご紹介します。
パタゴニア
環境問題に取り組む企業としてまず思い浮かぶのがパタゴニアではないでしょうか?そんなパタゴニアももちろんアップサイクルプロジェクトをおこなっています。それが「ReCrafted」です。回収した古着から、生地を切り出し新しい製品を作り、世界に1つだけの形で販売しています。
mimycri
ドイツのスタートアップ「mimycri」はアップサイクルによって生産されたバッグを販売しています。このバックの前世はなんと、地中海を渡ったであろう「難民が乗っていたボート」。そのボートがたどってきた歴史まで想像してしまう、見た目だけでなく思いまで詰まった素敵な商品を販売するブランドです。
3sun
岡山県を拠点にアップサイクルな製品つくりをするブランド「3sun」。衣服の製造過程で要らなくなった布を使ってエプロンやパッチワークなどを制作して販売しています。中にはコーヒーで染められた商品もあり、抗菌・防臭効果が期待できるそうです。同社の別ラインブランド「BAILER」で製造されている布製のバケツも人気を集めているようです。
FREITAG
アップサイクルのパイオニアともいえるブランド「FREITAG」はスイス発の会社。スイスの国民性でもある“あるものを大事にする”、“最大限に活用する”を大切に、アップサイクルでバッグを作るブランドです。彼らのバッグは、トラックの幌を使って作られており、通常のバッグよりもコストも時間もかかります。それでも、地球に優しくという思いを強く持ち活動しているブランドです。
まとめ
一度アップサイクルを意識して生活してみると、多くの企業やブランドでアップサイクルが取り入れられていることに気付きます。これからは、モノやサービスを選ぶ際に、「アップサイクル」という視点を持って判断してみるのもいいかもしれませんね。
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September 02, 2020 at 02:00PM
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