イタリアのハンドメイドバイシクルの工房と自転車職人を応援する活動を行うarteciclo(アルテチクロ)が、ZULLO(ズッロ)のビルダー、ティツィアーノ・ズッロ氏から届いた日本のサイクリストへのメッセージをサイトで紹介している。
ズッロは1980年代から90年代にかけて、トップカテゴリーを戦うオランダの強豪プロサイクリングチームTVMにバイクを供給していたことで知られる。ティツィアーノ・ズッロ氏はイタリア・ハンドメイドバイシクル界の大御所ビルダーの1人だ。サイクルロードレース選手でもあった同氏は1973年、若干21歳にしてフレーム作りを始める。TVMにバイクを供給していた最盛期の工房は10人の職人と、年間数千台のフレーム生産規模を有し、ヴェローナを代表する自転車メーカーであったが、“手を汚す仕事をする”職人に戻ることを決意。以降、現在までハンドメイドでユーザー一人ひとりの要望に応える小規模な工房として活動している。
フレームは塗装も工房で自ら行っており、ティツィアーノ・ズッロ氏はペインターとしても卓越した腕前を誇っている。TVMチームのサプライヤー時代から採用している、燃えさかる炎のような “ジャッロ・ラディカ”が彼の代表作のひとつで、その卓越した技巧は見るものを魅了する。これ以外にも、すべてがオリジナルデザインをオーダーできるズッロのフレームはアーティスティックで美しく、イタリアンハンドメイドらしい魅力に溢れている。
また、アトリエ・キノピオ代表の安田マサテル氏がイタリア時代にこの工房に長年身を置き、帰国後も同ブランドのインポーターとして活動していることから、日本国内でもファンが多い。なお、日本を含むアジアマーケット向けのズッロ製品は現在、安田氏が塗装を担当している。
ティツィアーノ・ズッロ氏は2014年に来日したこともあり、日本のサイクリストとも親交を深め、日本からズッロの工房を訪問する人も少
なくない。イタリアでは新型コロナウイルスの流行拡大で現在も都市封鎖や移動・外出制限が続いているなか、同氏は日本のサイクリストのために以下のメッセージを寄せている。
「現在、イタリアではロックダウンがまだ続き、外出が制限されています。家から出られるのは商店での生活必需品の買い物か、薬局に行くときに限られます。
私のような小規模事業者の多くは活動していますが、材料や部品の供給が停まっているため、厳しい状況であることにはかわりません。サプライチェーンが影響を受け、みんな生産活動の停止を余儀なくされています。例えば、今朝も、ボトムブラケットをねじ切りして準備したかったのですが、材料が無く、製造元に問い合わせたところ、なんと彼らも在庫を切らしているのです!! 同様にドロップアウト(エンド)も、材料がないため製作できません。
現在オーダーを受けて製作中のフレームのいくつかは、特殊なカラーがリクエストされており、塗料メーカーが休業しているために塗料が手に入らず、ペイントすることができません。白、黒、赤、グレー、ブルーといった定番色ならストックがあるのですが。
飛行機での輸送にも大きな影響が出ています。イタリア発の多くの国行きのフライトがキャンセルされたため、出来上がったフレームの発送もままならない状況です。
今は、妻と庭仕事をしたりして毎日を過ごしていますが、大好きなバイクフレーム作りの仕事に一日も早く復帰したいです。今のようなイタリアの姿は本当にこれまで経験したことがありません。正直に言って悲しいし、気分が落ち込みます。自転車職人の仕事が私の情熱です。工房に行き、そこでただ単にものづくりをするだけでなく、新しい素材や、細部へのこだわりなど、何か新しいことに取り組む。そんな毎日に私は幸せを見い出し、感謝していました。
日本の状況はいかがですか? 皆さんも5月上旬まで緊急事態宣言下ですが、外出は禁止されていないそうですね。自転車に乗っている日本のサイクリスト達の写真を見ました。とはいえ、世界の経済が危険にさらされた今、日本の皆さんもつらく苦しいトンネルの中にいるのではと想像します。
新型コロナウィルスの流行が終息後の社会は大きく変わり、消費にも影響が出て、これまでのようにはものが売れなくなるでしょう。先日、スウェーデンの顧客が写真を送ってくれました。彼のバイクは私が1985年に作ったものです。彼のように、多くのサイクリストが、80年代のズッロのバイクを今でも愛用してくれています。自転車に限らず、靴や衣服などあらゆる製品に言えますが、これから人々は長く愛用できる高品質の製品をより求めるようになるのだろうと考えています。数は少なくても質の高いものを所有する、それが、これからの時代に合った暮らし方でしょう。
お店にあふれるように並んだ商品が、間もないうちにバーゲン価格で売りさばかれ、せっかく買った製品が1か月後には3割引きで手に入るようなことは、間違っていると私はいつも思っています。これからは、視点を変えて将来を見据える。そして自然に敬意を払いましょう。
今回、このように日本の皆さんに話しができ、うれしく思っています。平穏な日々が戻ったら、再び日本を訪れたいと思っています。マソ(安田マサテル氏)にまた世話になります。今度はゆっくり時間を取って、できれば自転車で日本の美しい自然を満喫したいですね。いずれイタリア、あるいは日本でまたお会いできることを楽しみにしています。それまで皆さん、どうかお元気で」
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April 27, 2020 at 08:34AM
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